壁を作る

よく打撃の際に
「泳いじゃってるよ〜!壁作って、壁を!」
とベンチから声が飛ぶ事がありますが、言われている本人は「泳ぐ」っていうのが
どういう状態のことなのか分かっているのでしょうか?

今更ながら、自分の中では当たり前だと思い、チーム内でも普通に使っている言葉やプレーが
意外と認知されていないのではないか?と不安になる事が最近多々あるので書いていきます。
(例:ツーアウトで打者が打ったら、ランナーはGOとか…←基本中の基本)

それと、今までバッティングを細かく解説した事がなかったので、良い機会なので書いてみます。
泳ぐとは、タイミングが合わず、ボールを待ち切れずに(右打者ならば)左肩が投手方向に行き過ぎ、
ボールを迎えに行ってしまって、結果下半身や腰の回転による力が100%発揮できず、
手打ちになってしまう状態のこと。
それが空気の中を泳いでいるように見えるので、一般的に泳ぐと言われています。

まずは動画を見てください。


明らかに泳いでます。
とことん泳いでます。
この「泳ぐ」ことを防ぐ為に、を作ります。
もう一つ動画を見てください。


がしっかりと出来ている例です。
以前からも書いているように、バッティングは下半身や腰で打つものです。
その回転した力を体重移動と共に上半身に伝え、ボールの軌道に合わせてバットを
コントロールしてやれば良いのです。
動画を見てみると、バックスイングの後、まず下半身(左足)を着地させてから腰が回り、
最後に上半身が出てきていますよね?
つまり、バックスイング後は下半身→腰→上半身と下から上に体を駆動させてやれば良いのです。
また、これも前々から言っている「頭の高さ」。
下半身がしっかりしている分、頭の位置も変わっていませんよね?
そして壁がしっかり作れていれば、「直球を待っていたのに、変化球が来た場合」でも対応できます。

そして本題のについてですが
これは井口選手のバッティングフォームを一つ一つバラしながら見ていきます。

1.構え ※クリックで画像が大きくなります。
















内角球も打てるようにお腹の前に懐を作っています。
膝を曲げて、腰も沈んでますね。

2.バックスイング
















軸足(右足)にしっかりと体重を載せ、腰も捻って全身のパワーを体の右半分に溜めていますよね。
この時に注意しなければならない事は「溜める」からと言って、右肩を下げてしまう人がいます。
そうする事によって極端なアッパースイングになってしまいますので、あくまでも両肩は水平なまま
バックスイングに入りましょう。
さらに重要なのは、このバックスイングの時に膝が体重に我慢できず、伸びてしまい、
目線がブレてバランスが崩れてしまうこと
です。
チーム内でも、ここで間違ったスイングになってしまう人が多いです。
本来はバックスイングの時こそ、体を沈めるべきなのです。

3.着地
















この着地も重要です。
左足を着地する際、つま先を開いて(つま先を投手方向に向けて)着地してしまう人が多いです。
つま先を開くと、その後右足を回転→腰を回転していきますので、回転した力についていけず
どっしりとした下半身(土台)が出来なくなってしまいます。
結果フォームが崩れ、バッティングがダメになってしまう原因でもあるのです。
それを防ぐ為に、私はかかとから着地するように意識しています。
かかとから着地しようとすると、人間の体の構造上、自然に左膝が内側に入ります。
その相乗効果によって、しっかりした土台が出来上がります。
また、以前にイチロー選手のバッティング前のルーチンの記事を書いた事があります。

イチロー選手は打撃時に「右肩を開かない為に、あの素振りをする」と解説しました。
この着地の段階で足が開いてしまうと、肩が開きやすくなってしまうのも事実です。
それだけバッティングにおいて、「下半身を作る」というのは重要なことなのです。

4.壁を作る
















ここで本題になります。
2.で溜めた力を、バットに伝え載せる為に左半身に体重を移動していきます。
この時に体重移動に失敗してしまうと、上記のような「泳いでしまう」という結果になります。

私が常々言うのは
・自分の全体重を3だと思ってください。
・その全体重を2:1に分けます。
・2は左半身へ。1は軸足に残します。これから軸足を回転させてスイングの柱にしなければ
ならないので、必ず1は軸足に残します。
ということ。

その時に、全体重が左半身に行かないように我慢して、頭の中でこれ以上体重を移動してはいけないと
意識する事を(見えない)壁を作る
というのです。

こんな風に。















このバランスを保つ事が出来ていないと、まず結果は出ないと思いますし、
強い打球は打てないと思います。
ですから、「着地」して右肩をバックスイングの時と同じように水平に左半身に移動していき、
着地した足よりも投手側へは、絶対に左肩を移動しないという意識を常に持つ事です(右打者の場合)。

5.スイングへの始動
















スイングに入っても、左足は壁を保ったままです。
着地した姿勢のまま、ここから腰を回転させていきます。
ここでポイントなのは、下半身からの力を腰に載せて、思い切り回転させること。
そしてもう一つのポイントは、その腰を回転させる為に、軸足の太ももを締めるということです。
軸足の太ももを締める為には、軸足のつま先を回転させないといけません。
ただ経験上、「つま先を回転させる」という意識よりも「太ももを締める」という意識を持っていたほうが
飛ぶ打球というよりも、反発力を活かした鋭い打球を打てた経験のほうが多いです。
事実、太ももを締めるという事は、軸足を形成するのにとても必要な事ですし、
太ももを締めた形を作ると、腰に力が入る印象があります。
もちろん、膝が真っすぐ伸びていては力も発揮できません。

6.インパクト
















ここまで溜めて伝えてきた力を上半身に載せます。
その時、腕を伸ばしていないとボールを捉えないと、ボールに強さは載りません。
また、壁を崩してもダメです。
腰を回転させて、腕の力で思い切りボールを引っ叩くイメージです。
引っ叩いた時に、体重移動がしっかり出来ていれば腕の力だけではなく、自分の体重などの
力も一緒に載せる事ができます。
そして右打者の場合、左肩を開かないこと。
肩が開くと絶好球もファールグラウンドにしか飛ばなくなってしまいます。
そして、せっかく移動した体重が逃げてしまい、打球に力が入らなくなります。

7.フォロースルー
















この時も下半身は崩れません。
ここでフォームが崩れる人は、バットの重さが自分に合っていないか、もともと脚力が無いか、
フォームが安定していないかのどれかです。
ここで右手がバットから離れる人が多いですが、素振りの時は離さないほうが良いと思ってます。
「振ったら離す」というクセ=体が開くクセがつきやすいからです。

素振りやティーバッティングは、自分のバッティングフォームの確認や体にそのフォームを教え込むのに最適です。
その段階で、わざわざ失敗を冒す危険を体に染み込ませる必要はないのです。
また、素振り時に「スイングスピードを上げたいからマスコットバットで振る」という人もいますが
自分のフォームも出来ていないのに重たいバットで振っても、逆にフォームを崩したり
筋肉を痛めてしまうだけです。
また、重たいバットを無理やり振ろうとするとドアスイングにしかなりません。
スイングスピードを上げても、バットにボールが当たらなければ意味がありませんし、
全身の力をいかに効率良く(ロス無く)ボールに載せられるかのほうがバッティングでは重要なのです。

一般に野球経験者と呼ばれる人と、そうでない人の違いは

・バットを振ってきた量
・野球における筋力量
・小さいボールを打つという動体視力の慣れ
以上の違いです。

逆の事を言えば、以上の違いしかないのです。
素振りの量はいくらでも巻き返せますし、草野球の為に毎日筋トレ!というのは個々の判断ですが
筋力が足りなくても野球では「内野を抜けばヒット」なのです。
そしてヒットを生む為には、ドアスイングのような大振りよりも、コンパクトなスイングで
「バットの芯に当てる」という意識を持ったほうが確率的にもヒットになるケースは多いでしょう。
そして動体視力も、「目線をブラさない」という意識で作ったフォームで臨めばカバーできるでしょう。
ぜひ、をしっかり作って、自分なりのフォームを身につけてください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt=""> <pre lang="" line="" escaped="" highlight="">

Spam Protection by WP-SpamFree